競売での引渡命令は、対象不動産に対して行なわれる手続きで動産には効力がない。
賃料未払いなどで行なう明渡訴訟では、金銭債権に伴う動産執行も同時に行い、動産の換価、あるいは執行不能などで動産処分は簡単にできる。
しかし、競売における動産の明渡執行は、保管場所への運搬費、また、保管費用もかかり、更に債務者が動産を引き取りにこなければ、換価しても債務者に金銭が流れるだけだ。また、裁判所が執行に要した費用に相殺するともいう。
裁判に要した費用は、債務者に請求できるとしても、回収できるあてがない。
今回は、マンションを落札、残置物が大量にあったケースだ。
代金納付後、昼、夜となく訪問するも所有者は一向に出てこない。
文章を投函するも返答はない。あまり、やりたくない行為ではあるが玄関に貼紙をした。当然、問題が発生しないように、『当社に連絡ください』と
しかし、連絡はなし。次に賃料月10万円とする内容証明を送付した。
それでも連絡なし。再度、玄関に貼紙、そして集合ポストにも貼紙をした。
すると、他の住民に知られてしまうのがマズイと思ったのか、前所有者から連絡が入ってきた。話し合いの末、3週間ほど退去に要する期間を待つことにした。
前所有者は、お金がなく引越しが困難な状況を間接的に伝えてくるも特に立退料を支払う気持ちなどなく、明渡予定日のみ確定させた。
明渡予定日になっても明渡をするどころか、連絡すらない。
いつものことかなと思うものの、代金納付から、もう1ヶ月も経過している。
早めに引渡し命令の申し立てを行なっていればよかったかと後悔が先に走る。
ただし、この物件は、3点セットでみる室内の動産から、執行を行なうと100万円位の出費が予想される為、できれば執行は避けたいのが本年だった。
最終策として、危険が伴うが鍵交換を行なうこととした。
前所有者の人格も概ね把握できていた。約束の明渡期日も守られていない。更に交渉内容は録音している。
もう少し制度を上げる為、鍵交換を行なう旨の書面、鍵交換を行なう旨を前所有者への携帯留守録に入れる。もちろん録音もしておく。
鍵交換当日、鍵屋が現地に来て、こちらは本人確認の書類を見せ、鍵交換は終了した。そして、鍵交換が済んだ旨、前所有者の携帯留守録に録音とともに入れる。
翌日、前所有者から電話が入った。「本当に鍵交換したのですね。室内に、まだ持っていきたいものがありまして・・・」
結局、前所有者が必要な動産を取りに来る時間帯だけ、鍵を開けておくことにした。ただし、「その時間が経過し、鍵を閉めた後は、室内の動産は、処分してもいいものと判断します」と前所有者に言うと、「それでいいです」と答え、それも録音した。これで動産放棄承諾書を取得したのと同じ効果だ。
これで、代金納付から1ヶ月半程要したが、費用をかけることなく、明渡は1件落着となった。勝手に鍵交換することは危険を伴うが、証拠物として、今回は書面ではなく、録音を使い、もし、裁判となっても敗訴とはならぬよう自分なりに制度は高めたつもりだ。